アスベストを含むスレート屋根の見分け方と撤去方法・健康被害を解説
屋根
古いスレート屋根には、アスベスト(石綿)が含まれている可能性があります。アスベストは過去に建材として広く使用されていましたが、吸い込むと肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすリスクがあるため、現在は使用が禁止されています。しかし、築年数の古い住宅では、屋根材にアスベストが含まれているケースも少なくありません。
当記事では、アスベストがスレート屋根に使われていた時期と背景、健康被害、アスベスト含有の見分け方、含まれている場合の対応方法、撤去・リフォーム方法について詳しく解説します。
【この記事はこんな方におすすめです】
- 自宅や工場の屋根がアスベストが含まれているか不安な人
- 自宅の屋根にアスベストが含まれているか確認する手段を知りたい人
- 屋根にアスベストが含まれていて、どのような対応をとるか迷っている人
目次
アスベストを含むスレート屋根がある?
スレート屋根は、製品や製造時期によってアスベストを含む場合があります。アスベスト入りの可能性がある代表例として、スレートボード、住宅屋根用化粧スレート、スレート波板などが挙げられます。含有の有無は外観だけで判断しにくいため、製品名・型番、施工時期の資料を確認し、不明な場合は専門業者の調査で確かめましょう。また、破損部を割ったり削ったりすると粉じんが出るおそれがあるため、自己判断の補修や高圧洗浄は避けましょう。
アスベストがスレート屋根に使われていた時期と背景
スレート屋根では、耐火性・耐久性を高める補強材として石綿(アスベスト)が戦後を中心に広く使われました。日本では1970〜1990年頃に石綿の輸入量が多く、建材用途が拡大した経緯があります。吸入による健康被害が問題化し、段階的に規制が強化されました。
2004年10月の規制強化で、石綿を1%超含む建材の製造などが禁止対象に拡大され、住宅屋根用化粧スレートも含まれます。さらに2006年9月からは0.1%超を含む製品が原則禁止となりました。なお、規制前からノンアスベスト品も流通しており、建築年だけで断定できません。
アスベストによる健康被害
石綿(アスベスト)は肉眼で見えないほど細い鉱物繊維で、飛散した繊維を吸い込むと肺に沈着し、長期間残ることがあります。主な健康被害は、肺の線維化が進む石綿肺、胸膜プラーク、悪性中皮腫、肺がんなどです。症状はすぐ出にくく、ばく露から数十年後に発症する例が多い点が特徴です。
リスクは吸い込む量や期間に左右され、解体・改修、切断や研磨、高圧洗浄で粉じんが出る場面で高まります。作業者だけでなく、作業着の持ち込みや周辺への飛散で家族や近隣がばく露する可能性もあります。なお、どの期間、どれくらいアスベストを吸い込めば中皮腫になるのかは明らかになっていません。
(出典:政府広報オンライン「石綿による健康被害を受けたかたへ。「石綿健康被害救済制度」があります」)
(出典:独立行政法人環境再生保全機構「アスベスト(石綿)とは?」)
スレート屋根にアスベストが含まれているかの見分け方

スレート屋根の石綿(アスベスト)含有は、外観や築年数だけでは断定できません。商品名が一般名称化していたり、図面と現物が一致しない例もあったりするためです。以下の4点を順に確認すると判断ミスを減らせます。
■築年数・設計図書で一次確認
建築時期に加え、設計図書・竣工図・仕様書にある屋根材の製品名・メーカー名・型番を探しましょう。年数は目安で、同じ年代でも含有・非含有が混在します。
■屋根の状態を離れて観察
下屋根などを窓から見て、ひび・欠け・はく離の出方を確認します。ノンアスベスト品は劣化が早い傾向がありますが、状態だけで結論は出せないため注意が必要です。確認のために屋根に上るのは怪我につながる可能性もあるため避けましょう。
■有資格者の事前調査
書面・目視で特定できない場合は、有資格者に調査を依頼しましょう。現地確認に加え、必要に応じて検体採取と分析で確定します。
スレート屋根にアスベストが含まれている場合の対応
アスベストを含むスレート屋根でも、直ちに交換が必要とは限りません。石綿は屋根材の中に固着しており、割れ・欠け・はく離が進んで粉じんが出る状態でなければ、日常的に大量に飛散する可能性は高くありません。
そのため、まずは屋根に上がらず、窓から劣化状況を確認し、定期点検で状態を把握します。ひび割れが多い、表面が層状に剥がれる、破片が落ちる場合は、専門業者に相談し、撤去・葺き替えのほか、カバー工法による囲い込みなど、状況に合った方法を検討してください。
工場など人の出入りが多い建物では、点検頻度を上げ、必要に応じて作業区域の立入管理も検討します。工事を行う場合は、事前調査や届出などの法令手続きが必要になるため、有資格者のいる事業者を選ぶことが重要です。
アスベスト含有スレート屋根の撤去とリフォーム方法

アスベスト含有の可能性があるスレート屋根は、撤去や改修の方法で工事内容と注意点が変わります。ここでは、代表的な方法として「葺き替え」と「カバー工法」を紹介します。
葺き替え
葺き替えは、既存のスレート屋根材を撤去し、野地板や防水紙など下地の状態も点検・補修した上で、新しいノンアスベスト屋根材に張り替える工事です。屋根材そのものを取り除くため、将来的な飛散リスクを下げやすい点が強みです。劣化した下地も同時に直せるので、雨漏り対策や耐久性の面でも効果が期待できます。
一方で、足場の設置、撤去・運搬、分別と処分の工程が増えるため、カバー工法より工期が長くなりやすく、廃材処理費や解体・撤去費が発生して総費用も高くなりがちです。工事は天候の影響を受けやすく、日程に余裕を見て計画します。
カバー工法
カバー工法は、既存のスレート屋根を撤去せず、その上から防水シートや下地材を施工し、新しい屋根材で覆う改修方法です。既存屋根を覆って封じ込めるイメージで、解体工程が少ないため粉じん発生リスクを抑えやすい点が特徴です。葺き替えと比べて廃材撤去がほぼ不要なので、工期が短く、費用も抑えやすい傾向があります。工場のように操業停止を避けたい現場では、屋根上で作業が完結しやすく、屋内への影響を小さくしやすい点もメリットです。
一方で、アスベスト含有屋根材が残るため、問題を先送りにする側面があります。将来、全面撤去が必要になった場合は、解体・処分費が改めて発生し、高額になる可能性もあるためそれを見込んだ計画が必要です。
まとめ
スレート屋根は製品や製造時期によってアスベストを含む場合があります。健康被害は飛散した繊維の吸入で起こり、潜伏期間が長い点が特徴です。見分け方は、築年数を目安にしつつ、図面・仕様書で製品名や型番を確認し、国交省の含有建材データベースで照合します。外観だけでは難しいため、必要に応じて有資格者の調査と分析で確定しましょう。
もしアスベストが含まれていても直ちに交換が必須とは限らず、劣化状況を点検して判断します。改修は、撤去して更新する葺き替えと、上から覆うカバー工法が代表例です。
この記事の監修者情報
峠元 聡良
所属:峠元板金工業所
経歴:職人歴4年