屋根の漆喰の寿命と補修タイミング|劣化症状と補修方法も解説
屋根
屋根の漆喰は、屋根の部位の中でも重要な役割を果たしている部分です。しかし、漆喰の一般的な寿命や劣化症状、補修方法などについて知っている方はあまりいません。普段知る機会も少ないため、劣化しているけどどうしたら良いのかと不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
当記事では、漆喰の一般的な寿命や劣化症状、補修タイミングなどを解説します。
【この記事はこんな方におすすめです】
- 屋根の漆喰の補修のタイミングが知りたい方
- 屋根の漆喰の劣化が気になる方
- 屋根の漆喰の補修にはどれくらい費用がかかるか知りたい方
屋根の漆喰の寿命はどれくらい?補修のタイミング
漆喰とは、雨水の侵入を防いだり見た目を美しく保つために、屋根の棟と瓦の間の隙間を埋める建材です。石灰石と水を混ぜたところに、「すさ」や「のり」などの自然素材を加えて作られています。
漆喰の寿命は台風や地震などの自然災害による影響で劣化する場合もありますが、一般的に15〜20年と言われています。耐用年数が50〜60年の瓦に比べると短いです。
屋根の漆喰の劣化で起こる症状
漆喰は15〜20年という耐用年数の中で、直射日光や雨風、災害の影響などで劣化します。屋根が劣化してくるとさまざま症状が起こるため、状態によっては補修が必要です。以下では、漆喰の劣化で起こる症状を4つ紹介します。
ひび割れ・欠け
漆喰は施工したときは湿っており、完全に乾燥するには数か月かかります。完全に乾燥するまでには雨が降って濡れることもありますが、乾燥状態と濡れた状態を繰り返し少しずつ乾燥していくのが漆喰の乾燥の過程です。
完全に乾燥すると漆喰は固くなるものの、乾いて濡れてを繰り返したときの収縮、寒暖差や雨風の影響、地震による揺れといった複数の要因によってひび割れや欠けが生じます。
屋根瓦からの剥がれ
漆喰は葺き土の表面に塗られて、施工時には漆喰と葺き土がくっついた状態になります。しかし、漆喰と葺き土は素材が違うため劣化の速度も異なり、気候や災害などの影響で徐々に漆喰のひび割れが生まれる上に、漆喰と葺き土の間に隙間ができやすくなります。
隙間が生まれひび割れが進行すると、欠けるだけでなく、剥がれてしまうほどに劣化が進みます。自宅の敷地内や屋根に石やコンクリートのような塊が落ちていたら、劣化した漆喰が剥がれたものの可能性があります。
コケやカビの発生
年数が経過した屋根は、漆喰が経年劣化により黒っぽく変色していることがあります。これは、劣化によって漆喰にコケやカビが生えているためです。
また漆喰にコケやカビが生えてしまうのは、劣化によってできたひび割れや欠けの部分から雨水が入り込み、葺き土に雨水が入ってしまうためです。この雨水によって漆喰にコケやカビが生えて、どんどん変色してしまいます。
漆喰にコケがカビができると根を張るため余計に雨水を吸収するようになり、余計にコケとカビを繁殖させる悪循環に陥ります。雨水を防止するという役割を果たせなくなるため、状態が酷い場合は修復が必要です。
雨漏り
漆喰の劣化の症状はそれぞれが無関係ではなく、一般的にひび割れが生まれて雨水が入り込むことで漆喰が黒ずんでいきます。その後、ひび割れや黒ずみが進んでひび割れは欠けや剥がれに、黒ずみはカビやコケの繁殖につながっていきます。剥がれやカビ・コケの繁殖があった後に起こるのが、雨漏りです。漆喰が劣化によって雨水を防止する役割を果たせなくなるためです。
葺き土は漆喰よりも多くの土を吸うため、漆喰が役割を果たせず葺き土が水を吸い込むと葺き土の劣化がどんどん進み、屋根の中に雨水が侵入するようになってしまいます。雨漏りは屋根の下地を腐らせたり、痛みの原因になったりするだけでなく、修復費用も多額になるため注意が必要です。
屋根の漆喰の劣化が軽いときの補修方法
漆喰のひび割れや欠け、剥がれなどの比較的軽い劣化の場合は、漆喰の塗り直しで補修することができます。漆喰の塗り直しの費用は1mあたり4,000円〜8,000円が相場目安となっており、一般的な漆喰の長さ60mだと24万円〜48万円程度です。また屋根の点検費用など別費用がかかる可能性もあるため、理解しておきましょう。
簡単な劣化の漆喰の塗り直し工事の補修の流れは、以下の通りです。
1.劣化した漆喰を除去する
劣化した漆喰をヘラで取り除き、漆喰の中にある葺き土は残しておきます。
2.葺き土を整えて湿気を与える
漆喰の土台となる葺き土は湿気を与えることで、漆喰とくっつきやすくなります。そのため、劣化によって崩れた葺き土を整えた後、葺き土に湿気を与えます。
3.漆喰を塗り込む
棟と瓦の間に隙間が生まれないように、均一の厚みで漆喰をヘラやコテで塗り込みます。漆喰を厚く塗りすぎると雨や風に当たりやすくなり劣化を早めるため、適度な厚みで塗るのがポイントです。
4.表面を整えて乾燥させる
漆喰を塗り終えたら乾燥させます。乾燥時間は基本的に24時間ですが、冬季は48時間です。完全に乾燥するまでには数か月かかります。
屋根の漆喰の劣化が激しいときの補修方法
漆喰の欠けや剥がれが激しく、棟や瓦がずれたり崩れたりしている場合は、棟の積み直しが必要になります。ここまで状態が悪くなると、放置するほどに修理費用が高額になるため、早めに修理するようにしましょう。
棟の積み直しの相場費用は1m10,000〜35,000円です。この費用に加えて漆喰の補修費用も必要になります。
以下は、漆喰の劣化が激しい場合の修復の流れです。なお、棟の積み直しの方法にはいくつかあり、業者によって以下とは異なる施工方法の場合もあります。
1.棟部を撤去し、棟補強金物を設置する
劣化した東部の瓦や葺き土、漆喰をすべて撤去し、耐震や台風性能を確保するために棟補強金物を野地版と垂木に留めつけます。また最上段の瓦は、カットした瓦も含めてすべて留めつけます。
2.棟芯材を入れて補強し、南蛮漆喰を塗る
棟補強金物に棟芯材を留めつけます。南蛮漆喰とは葺き土と漆喰の機能を併せ持った漆喰のことで、それを棟芯材と桟瓦の隙間に塗り込みます。
3.冠瓦を棟芯材にビス留めする
冠瓦と棟芯材にパッキン付きのビスで留めつけます。
まとめ
屋根の漆喰の劣化は一般的に15〜20年です。劣化してくるとひび割れや欠け、コケやカビの発生、雨漏りなどの症状が起こってきます。状態がひどくなると雨漏りによって屋根の中に雨水が侵入し、屋根の下地を腐らせる原因にもつながります。ある程度劣化しているようであれば、補修が必要です。
軽度な補修であれば漆喰の塗り替えだけで済みますが、棟の形が崩れるほどの劣化の場合は棟の積み直し作業が必要になります。そうなると比較的費用が高くなるため、できるだけ早めに補修するようにしましょう。