瓦棒葺きと立平葺きの5つの違い|メリット・デメリットも解説
屋根

屋根は風雨や紫外線から建物を守る重要な役割を担っており、屋根材の工法選びは建物の耐久性や快適性を左右します。特に近年、耐久性やコスト面で注目されている「立平葺き」と、古くから日本で親しまれている「瓦棒葺き」は、見た目が似ていることから違いが分かりづらいと感じる方も多いでしょう。
当記事では、瓦棒葺きと立平葺きの施工方法や耐久性、雨漏りのしやすさなどの違いについて詳しく解説します。
【この記事はこんな方におすすめです】
- 屋根リフォームや新築を検討している方
- 屋根の雨漏りや劣化が気になっている方
- 金属屋根の施工を検討している方
瓦棒葺きと立平葺きの違い
瓦棒葺きと立平葺きは、どちらも広く使用されている金属屋根の工法です。
瓦棒葺き
屋根下地に「瓦棒」と呼ばれる木材を設置し、その上に金属板をかぶせて固定する工法です。昔ながらの工法で、和風建築にも多く使用されています。
立平葺き
瓦棒を使用せず、金属板を直接屋根下地に取り付けて施工する方法です。継ぎ目が少なく雨漏りリスクが低いため、現代の住宅に多く取り入れられています。
瓦棒葺きと立平葺きは見た目が似ていることから混同されやすいものの、施工方法や構造は大きく異なります。以下では、瓦棒葺きと立平葺きの違いについて解説します。
瓦棒の有無
瓦棒葺きと立平葺きの大きな違いは、「瓦棒(かわらぼう)」の有無です。瓦棒葺きでは、屋根の下地に「瓦棒」と呼ばれる桟(さん)を設置し、そこに金属板を巻き付けて施工します。一方、立平葺きは桟を設けず、金属板を直接固定するため、屋根の表面がフラットでシンプルな仕上がりになります。
瓦棒部分には雨水が溜まりやすく腐食や雨漏りのリスクがある一方、立平葺きは構造上そのリスクが低いのも特徴です。
施工方法の違い
瓦棒葺きは、屋根の下地に「瓦棒」と呼ばれる下地材を等間隔に設置し、その上から金属板を被せて施工する方法です。瓦棒の上には「押さえ金具(瓦棒押さえ)」を取り付けて金属板を固定します。屋根に凹凸ができるため、意匠性を重視した建物に用いられることが多い工法です。
一方、立平葺きは、瓦棒を設けずに、長尺の金属板の端部を立ち上げて重ね合わせる「嵌合式」や「はぜ組み」と呼ばれる方法で施工されます。屋根面がフラットに近く、雨水がスムーズに流れる構造が特徴です。部材が少なく施工も比較的簡単なため、工期を短縮できる点もメリットと言えます。
雨漏りのしやすさ
瓦棒葺きは、垂木に沿って設置された「瓦棒」と呼ばれる下地材に金属板を固定する方法で、構造上、瓦棒部分に雨水が侵入しやすいのが特徴です。特に経年劣化や施工不良があると、雨漏りのリスクが高まる傾向にあります。
立平葺きは、金属板同士を立てて接合するシンプルな構造で、継ぎ目が少なく雨水の侵入を防ぎやすい設計となっている方法です。瓦棒葺きに比べて雨漏りのリスクが低いとされています。ただし、どちらの工法も適切な施工と定期的なメンテナンスが重要であり、施工不良やメンテナンス不足があると雨漏りの原因となる可能性があります。
耐久性の違い
瓦棒葺きと立平葺きでは、使用される材料や構造の違いから耐久性にも差があります。瓦棒葺きは垂木や木材を多用するため、木材部分が劣化しやすく、定期的な点検や補修が不可欠です。また、経年によって金属部分の錆や腐食も発生しやすく、瓦棒葺きは構造上、劣化の影響を受けやすい面があります。
一方、立平葺きは金属板を一枚で施工するため継ぎ目が少なく、錆びにくいガルバリウム鋼板などの耐久性の高い素材が用いられることが多いため、比較的長持ちしやすいとされています。どちらも適切な施工とメンテナンスによって、寿命を延ばすことが可能です。
コストと施工時間の違い
瓦棒葺きは屋根材に加えて心木などの部材を用いるため材料費がやや高くなり、現場での加工や施工工程が多いことから施工費・施工時間もかかる傾向があります。
立平葺きは工場であらかじめ成型された屋根材を使用するため、現場での手間が少なく、コストを抑えやすいのが特徴です。施工時間も短く済むため、スピーディーな工事を希望する方に適しています。コストや工期の観点からは、立平葺きのほうが導入しやすい屋根と言えるでしょう。
瓦棒葺きと立平葺きのメリット・デメリット
瓦棒葺きと立平葺きは、どちらも金属屋根の立葺き工法の一種ですが、近年では施工性やコスト面から立平葺きが主流となっています。とはいえ、瓦棒葺きにも独自のメリットがあり、選び方は用途や建物の構造によって異なります。
以下では、それぞれの工法についてメリットとデメリットを詳しく解説します。
瓦棒葺きのメリット・デメリット
瓦棒葺きのメリット・デメリットを以下にまとめました。
メリット | 強度が高い | 垂木に屋根材をしっかり固定する構造のため、台風や積雪などにも耐えやすく、建物の保護性能に優れています。 |
---|---|---|
外観に重厚感がある | 立体的な瓦棒の形状により、屋根全体に高級感や重厚感が生まれ、和風建築や古民家にも調和します。 | |
垂木を利用できる | 既存の垂木を活用してリフォームができる場合もあり、工事内容によってはコストを抑えられることもあります。 | |
デメリット | 施工費用が高い | 垂木の設置や瓦棒の加工など手間がかかるため、材料費・工賃ともに高くなる傾向があります。 |
雨漏りのリスクがある | 釘やビスで屋根材を固定するため、経年劣化によって接合部から雨水が浸入する可能性があります。 | |
施工技術が必要 | 専門的な知識と技術を要するため、信頼できる施工業者を選ばなければ施工不良のリスクもあります。 |
立平葺きのメリット・デメリット
立平葺きのメリット・デメリットを以下にまとめました。
メリット | 施工費用を抑えられる | 垂木の設置が不要で、屋根材を直接野地板に固定するため施工が簡易で、工期が短くなる分コストを抑えられます。 |
---|---|---|
雨漏りしにくい | 屋根材をつなぎ目なく1枚で施工するため継ぎ目からの水の侵入が少なく、強い雨風でも安心です。 | |
シンプルで現代的な外観 | フラットな仕上がりでモダンな印象を与えるため、スタイリッシュな住宅に調和しやすいデザインです。 | |
デメリット | 遮音性が低い | 金属製で断熱材を使用しない場合、雨音が響きやすく、室内で音が気になるケースがあります。 |
熱を持ちやすい | 夏場は屋根が高温になりやすいため、断熱対策を講じないと室内温度が上昇しやすくなります。 | |
補修時に広範囲の工事が必要 | 1枚板で仕上げているため、一部に不具合が出ても全体の張り替えが必要になることがあります。 |
まとめ
瓦棒葺きと立平葺きは金属屋根の代表的な工法で、見た目は似ていますが構造が異なります。瓦棒葺きは強度や重厚感に優れる反面、施工費用や雨漏りリスクが高いのが特徴です。
一方、立平葺きは施工が簡単でコストが抑えやすく、雨漏りもしにくいため、近年主流となっています。それぞれの特徴を理解し、建物や用途に合った工法を選ぶことが重要です。