瓦屋根内部の構造ってどうなっているの?大棟の構造も解説
屋根
瓦屋根がどのように造られているのか、知っている方はそう多くはありません。美しくならぶ瓦は実は瓦屋根の構造の一部で、瓦屋根というのはさまざまな施工を経て造られています。また瓦屋根の頂点となる大棟の部分も、小さな瓦が何枚も重なり、細かな施工があって造られているのです。
当記事では、瓦屋根と大棟の構造をそれぞれ紹介します。瓦屋根の構造を知りたい方は、ぜひご覧ください。
【この記事はこんな方におすすめです】
- 瓦屋根を備えた住宅に住んでいる、または購入を検討している人
- 瓦屋根のリフォームや修理を検討している人
- 瓦屋根の構造や機能について詳しく知りたい人
瓦屋根の構造
瓦屋根は見た目以上に複雑な構造を持っています。まず、木材を組んで骨組みを作り、さらに板を張って防水処理を施した上に瓦を重ねることで完成します。これらの工程が、瓦屋根の耐久性や美しさを支えているのです。以下では、瓦屋根の構造について、一番下の木材部分から詳しく見ていきましょう。
垂木
瓦屋根の基礎となる垂木(たるき)は、屋根全体の構造を支える重要な部材です。垂木は棟木から軒先に向けて一定間隔で取り付けられ、屋根の傾斜や形状を決定します。瓦や防水層を支える骨格としての役割を果たし、屋根の重量を均等に分散し支える機能を持っています。
特に瓦屋根は重量があるため、垂木の施工が不十分だと構造全体が歪む原因になりかねません。木材でできているため、湿気や雨水による腐食のリスクもあります。そのため、耐久性の高い木材を使用し、劣化や腐食が起きていないか定期的な点検が必要です。垂木の健全性が屋根全体の寿命に大きく影響を与えるといえるでしょう。
野地板
野地板(のじいた)は、瓦屋根の構造で垂木の上に敷かれる板状の部材で、屋根全体を支える基盤です。屋根全体の基盤として瓦や防水シートを支える重要な役割を担っているため、野地板が平坦でなければ瓦のズレや破損の原因になる可能性があり、施工時には特に精度が求められます。
近年では厚さ9mm、または12mmの構造用合板を使うのが主流で、地域や気候に応じて耐久性や防水性を考慮した素材が選ばれます。耐用年数は20〜30年と長いものの、湿気や腐食によって劣化が早まる場合もあるため定期的な点検とメンテナンスが必要です。
防水紙(ルーフィング)
野地板の上に敷かれるシート上の部材が、防水紙(ルーフィング)です。防水紙の上に瓦などの屋根材を設置しますが、屋根材だけではすべての雨水の侵入を防ぐことはできないため、防水紙で屋内への雨水の侵入を防ぎます。防水紙にはアスファルトを含浸させたものが主に使用され、耐久性や防水性に優れているのが特徴です。
また、防水紙は雨水だけでなく、結露や湿気から野地板を守る役割も持っています。施工時には屋根の傾斜や構造に応じて防水紙を重ねる方法が工夫されており、隙間が生じないよう正確な施工が求められます。屋根材にもし問題が生じた場合でも、防水紙に不具合がなければ雨漏りに発展することないと言われるほどに、防水紙の防水性は瓦屋根にとって重要です。
屋根材
防水紙(ルーフィング)を敷いたら、次に施工していくのが瓦(屋根材)です。瓦は瓦屋根の最上層に位置し、屋根全体を保護する役割を持ちます。重厚感のある見た目だけでなく、耐久性や防火性、断熱性に優れている点が特徴です。瓦は一枚一枚が独立しているため、雨水が侵入しにくく、耐久年数が他の屋根材よりも長いのが利点です。
また、瓦の重みが建物全体の安定性を高め、強風や台風にも耐えられる構造となっています。瓦の種類には、日本瓦や洋風瓦、平板瓦などがあり、それぞれの形状やデザインが建物の印象に大きな影響を与えます。瓦は単なる屋根材以上の機能を持ち、建物の性能と美観を支える重要な存在です。
瓦屋根の大棟の構造
瓦屋根における「棟(むね)」とは、屋根の斜面が交わる頂部を指します。その中でも「大棟(おおむね)」は屋根全体を締めくくる重要な部分で、複数の瓦を組み合わせて構成されているのが特徴です。大棟は美観を保つだけでなく、雨水の侵入を防ぎ、屋根の構造を強化する役割を担っています。
以下では、大棟を構成する具体的な部材について見ていきましょう。
漆喰
漆喰(しっくい)は、消石灰を主成分に作られた塗り壁材で、大棟と桟瓦の間の隙間を埋めて、その隙間から雨風から守る役割を持ちます。桟瓦を固定する力もあり、屋根全体の安定性を高めるのにも役立っている部分です。
漆喰は自然素材を原料としているため、耐久性が高く、防火性や防虫性に優れています。一方で、風雨や紫外線などの外的要因により劣化が進むこともあり、ひび割れや剥がれが生じる場合があります。そのため、定期的な点検と必要に応じた補修が欠かせません。
台熨斗瓦
台熨斗瓦(だいのしがわら)とは、大棟部分で使用される特殊な瓦で、棟の最下部に配置される基礎的な役割を持っています。通常、数枚の台熨斗瓦を重ねることで棟の基盤を構成し、その上に他の棟瓦を配置することで全体の構造が完成します。
台熨斗瓦の最大の特徴は、その積み重ねによって屋根全体に安定感を与えることです。防水性や耐久性を高める役割もあり、雨水の浸入を防ぐために重要な部材となります。
熨斗瓦
熨斗瓦(のしがわら)とは、大熨斗瓦と同様にお胸の下部に使用される、装飾的な瓦の一種です。大熨斗瓦を半分に割っているのが熨斗瓦で、大熨斗瓦の上に複数枚を積み重ねる形で使用します。細長く平らで「熨斗(のし)」と呼ばれる日本の伝統的な贈答用装飾品に似ていることから「熨斗瓦」と名付けられました。
熨斗瓦は積み重ねることで瓦屋根全体の強度を高め、防水性や耐久性においても重要な役割を担っている瓦です。大棟の目立つ部分に使用されるため高級感や重厚感を与える装飾の意味でも使用されており、熨斗瓦の中には模様をつけたものもあります。
冠瓦
冠瓦(かんむりがわら)とは、瓦屋根の棟部分の最上部に取り付けられる、屋根全体の仕上げを担う瓦です。その名前の通り「冠」のように頂点を飾るため、屋根の最も目立つ部分であり、美観を大きく左右します。
冠瓦は、棟部分の防水性を確保するだけでなく、風や雨から棟内を保護する役割も持っています。屋根全体のデザインに統一感を与え、建物の個性を際立たせる装飾性が求められるため、地域や建物の用途に応じてさまざまな形状や模様が用いられるのも特徴です。特に伝統的な日本家屋では、冠瓦に家紋や特別な意匠が施されることもあり、建物の品格を高める役割も担っています。
まとめ
瓦屋根は、複数の部材が組み合わさることで耐久性や美観を実現しています。瓦屋根は基礎部分から垂木、野地板、防水紙(ルーフィング)、屋根材の瓦の順で構成されているのが基本です。各部材がそれぞれの役割を果たし屋根全体を支えています。
また大棟では、漆喰や台熨斗瓦、熨斗瓦、冠瓦といった特殊な部材が使用され、防水性や耐久性を強化するだけでなく、美観を引き立てる装飾性も備えています。それぞれの部材は経年劣化によってメンテナンスが必要となるため、定期的な点検と適切な補修をすることで美しく安全な屋根を長く保てます。